ビスポーク・フレグランスを依頼する人の多くは、「自分が何を求めているかわからない」という状態で最初のセッションに来る。それで構わない。調香師の仕事は、お客様の言葉を素材に翻訳することではなく、言葉にならないものを素材で探すことだから。

第一回セッション:記憶の地図を描く

最初の90分は、香りの話をほとんどしない。どこで育ったか、どんな季節が好きか、忘れられない場所の記憶はあるか。そういった話を聞きながら、素材のサンプルを一つずつ嗅いでもらう。「これは好き」「これは違う」という反応が、方向性を決める。この段階では、フレグランスの構造は考えない。素材の印象だけを集める。

第一回と第二回の間:試作の期間

第一回セッションの後、Célesteは三〜四週間かけて試作品を作る。通常、三〜五種類の方向性を試す。それぞれを小さなムエット(試香紙)に記録し、番号をつける。この段階では完成品を想定しない。素材の組み合わせが何を呼び起こすかを確認する作業。試作品はお客様に郵送し、一週間かけて日常の中で嗅いでもらう。

第二回セッション:試作品の評価

第二回は、お客様が試作品を実際に使った感想を持ち寄るセッション。「朝は好きだったが夕方は違和感があった」「三日目に突然しっくりきた」といった具体的な観察が、次の調整の手がかりになる。この段階で方向性を一つに絞り、素材の比率と構造を調整する。第二回が最も時間のかかるセッションになることが多い。

第三回セッション:最終調整と完成

第三回では、第二回の調整を経た試作品を確認する。大きな変更が必要な場合は、もう一週間待つこともある。最終的に双方が納得した時点で、50mlフラコン三本分を調香・充填する。フラコンはVerrerie du Maraisの吹きガラス製、ラベルはSylvie Auclairの水彩画。調香ノート(素材リストと調香の経緯を記した手書きの冊子)も同梱する。

三ヶ月という時間について

最初のセッションから納品まで、おおよそ三ヶ月かかる。急ぐことはできない。素材の熟成に六週間必要なことも理由の一つだが、それ以上に、お客様が試作品と過ごす時間が必要だから。香りは、嗅いだ瞬間より、翌朝の記憶の方が正直なことが多い。

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