ベチバー(Vetiveria zizanioides)は、熱帯に広く自生するイネ科の植物で、その根から蒸留されるエッセンシャルオイルは、産地によって驚くほど異なる香りを持つ。ハイチ産は煙とダンプアースの印象、ジャワ産はよりクリーンでウッディ、インド産は甘くスモーキー。Brume d'Octobreにハイチ産を選んだのは、この煙の印象が十月の朝に必要だったから。

ベチバーが香りに与える役割

ベチバーはベースノートの素材として使われることが多い。持続性が高く、他の素材を肌に定着させる「固定剤」としての機能も持つ。ただし、ベチバーを使いすぎると香りが重くなり、他の素材を覆ってしまう。Brume d'Octobreでは、ガイアックウッドとの比率を何度も調整した。最終的にベチバーの比率を当初の半分に下げたことで、煙の印象を保ちながら軽さが生まれた。

ハイチ産ベチバーの特徴

ハイチ産ベチバーは、土と煙とかすかな海の印象を持つ。これはハイチの土壌と気候、そして伝統的な蒸留方法(薪を使った直火蒸留)によるものとされる。色は濃い琥珀色で、粘度が高い。アルコールに溶かすと、最初は重く感じるが、時間が経つにつれて煙の印象が後退し、土の温かさが前面に出てくる。

ジャワ産とインド産との比較

ジャワ産ベチバーは、ハイチ産より明るく、ウッディでクリーンな印象。スモーキーさが少なく、シダーウッドに近い感覚がある。インド産(ケーウラ)は甘みとスモーキーさのバランスが独特で、インドの伝統的な香水(アター)によく使われる。どれが優れているかではなく、作りたい香りの方向性によって選ぶ。

Brume d'Octobreにおける使い方

Brume d'Octobreは、2004年の十月にパリ11区の市場でドライマッシュルームを見かけた朝の記憶から生まれた。その朝の空気には、湿った土と枯れ葉と、どこかから漂う煙の匂いがあった。ハイチ産ベチバーはその煙と土を担当し、ガイアックウッドが枯れ葉の乾いた印象を加える。ダンプアースのアブソリュートは最後に少量加えた。

ベチバーの香りを実際に試したい方には、Brume d'Octobreのサンプルをお勧めします。サンプルセットに含まれています。つけた直後と二時間後の変化に注目してみてください。